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予防歯科

予防プログラムとは

 

 う蝕の原因が解決されていないのにその場限りの取り繕いの治療で済ましてしまう事ほど患者さんにとって気の毒な話は無いかと思います。
根本原因を無視して対症療法のみを繰り返していけば、いずれ収拾がつかなくなり生涯歯で苦しむことは多くの方々が経験されている事です。

 まずは原因を知り、その対策を実践する事が確実です。


 予防プログラムは、歯科衛生士が担当します。


う蝕については唾液検査・細菌検査・食生活等におけるリスクファクター分析によるう蝕原因の診査をいたします。
歯周病については、歯周ポケット(歯と歯肉の隙間の部分)等の精密検査や顕微鏡検査、CTによる3次元解析等をいたします。


以上のデータをもとに現状の把握と今後の治療計画を立案して、患者さん個々に合った予防指導を行います。
歯周病が認められる場合は、歯肉に隠れて見えない部分までの歯石や汚染物の除去を行う歯周初期治療を行います。
これら一連の診査診断・コンサルテーション・歯周病の初期治療を当院では “予防プログラム”に組み込んでいます。

見えないところで進行する歯周病

この写真の患者さんは、当院を受診されるまでに他の歯科医院で10年以上にわたり3か月に一度、健康保険で歯石を取るなどメンテナンスに通われていたとの事です。


印の歯は残念な事に、手遅れで抜歯を余儀なくされました。
抜歯後の写真のように、歯肉の下に隠れた歯根は先まで古い歯石で真っ黒でした。


歯周病治療に力を入れている医院で、適切なメンテナンスを受けていたらこのような結末にはならなかったでしょう。


 クリニックとしての診療方針は様々で、歯科医師によっても経験値や知識・技術レベルも様々で得手不得手があります。
特に歯周病に関しては、治療やメンテナンスの優劣は上の写真のように、患者さんには時が経過しないとわかりにくい場合が多いのです。
  

日本の健康保険では人間ドッグも含めて予防的な診療の大半は保険給付外ですので、より緻密な予防歯科を望まれるのならば、予防に精力的な歯科医師と歯科衛生士のもとで、適正な費用での自由診療での診療をお受けになることをお勧めします。


予防にかける時間・努力・費用は、失った歯の機能を取り戻すための治療にかけるそれよりも遥かに少なくて済むはずです。


何よりも、自分の天然の歯が一番ですから。

患者さんと力を合わせて

 歯周病の治療は一朝一夕では成し得ません。
十分な時間を費やし、丁寧に取り組む必要があります。
より良い診療には十分な時間が必要ですが、当院では一回の診療時間を長くお取りすることにより来院の回数や治療期間を最小限で済ます様に努力をしてまいります。


多くの方々は“予防=歯磨き”と思われる事かと思いますが、歯磨きもせず、定期的に歯科医院にも通うことの無い野生の動物たちには虫歯も歯周病もありません。
何よりも大切なのは御自身の生活環境を客観的に省みて生理的環境を構築していく事です。
日頃の生活姿勢や習慣・環境、食事、嗜好品、疾患、服用しているお薬、など様々なものが関わってまいります。
歯周病の多くはその原因が複雑で口腔内の対応のみでは良い結果が得られない事が多々あります。


 例を挙げてみますと、全身の平衡失調による異常咬合(噛み合わせ)や筋の異常緊張・血液循環不良による免疫低下・過剰な熱産生や熱の排出不良による鬱熱(人を構成する組織は42℃で破壊されます)など、複雑な因果関係が交差しております。
そのためには口の中ばかりではなく、ヒト全体から診ていくことが肝要となります。

容易な歯石の除去やクリーニングは危険 !

 歯周病の治療では歯に付着した歯石を除去することも治療の1つですが、一見簡単そうな歯石の除去にも歯科衛生士のレベル差は顕著です。
 歯の白くて硬いエナメル質に付着した歯石であればそれほどの問題はないかも知れませんが、歯周病を進行させる歯石はその下の象牙質の表層をカバーするセメント質に付着しています。
 セメント質とは、歯根部象牙質外表を覆う非血管性の結合組織である硬組織で、歯根と歯肉や顎の骨を結合させている歯根膜線維を歯根に付着させる重要な役割を持ちます。
 セメント質の厚さは、歯頸部付近では約20-60μm(1/50㎜~3/50㎜)と極めて薄く、硬さは象牙質よりはやや柔らかく骨と同程度です。
そこに強固に付着した歯石をただガリガリ削ればセメント質ばかりか象牙質までも削り取ってしまう恐れがあり、現実に不適切な歯石の除去によりかえって歯周病が進行してしまっている例はよく目にします。
 専門的には歯石だけではなく汚染されたセメント質までも削って歯根表面を滑沢にするルートプレーニングとセメント質は極力温存してセメント質表層の付着物のみを優しく取り去るデブライドメントとがあるのですが、それ以前にこの違いを正しく理解して慎重に処置ができる歯科衛生士は何%いることでしょうか。

 

 そればかりか知識と経験の乏しい歯科衛生士がハイパワー超音波スケーラーで、歯根のみならず修復物やその接着界面をギタギタに傷つけられたり、破壊されてしまう悲惨な事例も多々あります。

中には専門教育を受けていない資格の無い歯科助手が施術している医院も少なくないようです。

 又、インプラントの部位は天然歯とはメンテナンスの方法が全く異なりますので、インプラントに精通した医院の歯科衛生士が行わないと取り返しのつかないダメージを与えてしまう事もあります。

さらにインプラントはメーカーによって仕様が異なるため、それらの特性を把握してから対応する事も必要となります。

 歯ブラシ指導やホワイトニング程度であれば良いですが、歯周病やインプラントのメンテナンスであれば、歯科医師のもとでX線写真等によりきちんと現状を把握した上で、知識と技術の具わった経験ある歯科衛生士が行うことが理想的であることは言うまでもありません。

皆様がイメージされるクリーニングと、歯科医学的なメンテナンスとは大きく異なる事をご理解いただきたいと思います。

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