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ランディングスタビライザーのご紹介

歯医者さんで、治療後に首がおかしくなった事はありませんか?

 

それは首に力が集中してしまう診療の姿勢に原因があります。

ランディングスタビライザー.gif

くまがい歯科の診療ユニットには、足元に体重計のような目盛のついた足底板がついています。
これがLanding Stabilizer(ランディングスタビライザー)です。
正式名称は "置性圧力計付歯科診療用足底板" といいます。

 通常の歯科診療台は、倒した時には足はブラブラの状態ですが、電動で前後に位置を変えることの出来るLanding Stabilizerにより、足底に圧力を加えて身体を支える事がことができます。 
何Kgの力がかかっているのかが、随時判るように圧力計が装着されています。
足底板の位置はコントロールスイッチによって患者さん自身が調整でき、治療中でも自由に足底圧の調整をすることができます。
《製作協力:(株)ヨーゼン 渡邉 容至社長 佐野直文氏 中野俊宏氏》 

Landing Stabilizer の効果

首を守る ― 頚部へのストレスを軽減

 歯科治療時には、長時間にわたり患者さんに口を開けていて頂かなければなりませんが、

口を大きく開けるのには、単に下顎が下方に開くのみでは開ける量に限界があります。
イラストの右側のクマさんのように、頭と下顎が協調運動する事でより大きく口を開けることが出来るのです。 

アンカー 1

上のイラストのクマさんは、起きているので口を開けるときに頭が後ろに回転してもジャマするものはありません。
しかし、下のイラストのように、歯の治療のために仰向けに寝ている時には、頭は枕に乗っかっています。
そのため、起きている時の様に首を支点として頭を後方に回転する事ができないのです。
つまり、後頭部が支点となって頭が後方へ回転する事になります。
その場合、身体がしっかりと足底から支えられていて、首から下の体幹が頭を持ち上げるようにして回転するのならば問題はありませんが、そうでないと首が引き抜かれるような状態になってしまいます。
足底がしっかりと着いて身体を支えている場合その最大応力は足底にかかりますが、
足がブラブラの状態では、ともすれば身体がずり下がって開口時には頚部(首)に応力が集中してしまいます。
それにより頚部損傷や神経・血流障害が引き起こされる可能性があるのです。
歯科治療後に首がおかしくなったという話を耳にしますが、理屈が解ると恐ろしいですね。

 Landing Stabilizerにより足底で身体を支え、頭と首を安定位に導く事により頚部の損傷を予防することが期待出来ます。
開発時に足底圧が有る無しで口の開け易さを比較した調査では、足で支えた方が開口時の頚部のストレスが少ないとほぼ100%の被験者の感想でした。
当院の患者さんからも、大変好評をいただいています。

さらに頚部の保全のため、開口時に頭を回転する際に生じる、頭と枕の摩擦を軽減させるために専用ウォーターピローを開発しました。
これによりLanding Stabilizerとの相乗効果でさらに開口時の頚部の負担を減らす事が出来ます。

 脳を守る -  頭蓋骨はその容積を可変する事の出来る構造であることをご存知でしょうか?

アンカー 2

頭蓋骨は下顎骨を除くと14種22個の骨で構成されています。それらの骨は縫合(スーチャー)により可動性に繋がっています。言うまでもなく頭蓋骨の中には大切な脳が納まっています。そして内部には大量の血液が生涯休みなく循環しているわけです。
固い頭蓋骨の容器の中で、血液がドクンドクンと脈打ってしまうと、神経が一々反応して大変なことになります。 そのため頭蓋骨内部では血圧の変動が起こらない無拍動血流という特殊なメカニズムによって血液循環をしているのです。 
しかし、外傷・腫瘍等の疾患・血圧の急上昇・内出血等により頭蓋骨の内圧が高まる異常事態は生じ得ます。その際には頭蓋骨内の容積が拡大して内部圧力を緩衝する事が出来なければ、血管が破裂したり脳が損傷するなど深刻な事態が生じる可能性があります。
そのため頭蓋骨はたくさんの骨が可動性の結合により内容積を可変出来る構造になっているのです。

足底に圧力が加わると広がる上顎の幅 !

足がブラブラの時と、しっかりと足を着けて自重を支えた場合とで、上顎の歯型を採ってその幅径を比較したところ100症例中すべてで足が着いていた方が最大1mm近くも広かったという論文が既に他の研究者により発表されています。
これは足底圧により身体の水系成分の水位が上昇し頭蓋の内圧が高まることにより頭蓋骨の縫合が緩んで頭蓋容積が拡大されたためと考えられます。
上の歯列が収まっている上顎骨は2対が正中口蓋縫合により結合しているため、ここが緩むと歯型の幅も広くなるわけです。

過去に、左右にまたがる幅の窮屈な部分入れ歯を装着したときに、患者さんから鼻が詰まったり頭が重いという訴えを頂戴した実体験がありますが、理屈として納得できます。
  このエビデンスを尊重して、当院でインプラント補綴・ブリッジ・連結補綴物・義歯による修復治療を行う際には、縫合の可動性を制限しない設計を行う事を徹底しています。足がブラブラの状態でフィットさせた総義歯は足底圧がかかると窮屈になり頭を締め付けます。
 しっかりと足底圧のかかった状態でフィットさせた義歯は、立った時にぴったりで足がブラブラでややゆるくなります。
ブリッジ等で天然の歯と歯との連結であれば、歯と骨の間には歯根膜腔という間隙があるのでまだ僅かに可動性が残されるのですが、インプラントの場合は骨と完全に結合(オステオインテグレーション)しているため正中口蓋縫合をまたいだインプラントの連結は縫合の可動メカニズムを完全に停止させてしまうので要注意です。

 

局所麻酔時の悪心軽減効果

局所麻酔時に気分の悪くなる患者さんがいらっしゃいます。大体は麻酔薬に奏功時間を延ばすために添加されている血管収縮薬による合併症ですが、まず心臓の動悸が起こり次に腹部が重くなるような悪心が生じるケースが多いようです。そのような際には足底を加圧する事により悪心が緩和するようです。  
Landing Stabilizerには、足底圧の強さを随時確認出来るように圧力計を付けました。これにより、開発時にどのようなシチュエーションでどれほどの圧力値が有効なのか検証実験を行いました。 
局所麻酔時による動悸等の不快症状については安静位又はショック体位にして回復を待つのですが、長い時には数十分要する場合があります。
しかし足底圧を強めると、そのままの体位で数分ほどで回復されることが多いです。加圧により瞬時に回復したケースもあります。このような場合では7~10kg以上の強い圧をかけて踏ん張って頂くことが効果的です。 
製品化完了後は、導入された数件の歯科医院のご協力の基、2500例の検証実験により血圧や心電図等の測定等の調査研究を行い、地に足が着いていることの生理的有用性を確認できました。 (ランディングスタビライザー研究会 研究報告 1、2、3)より

 

普及を願って

かつて新聞に美容院のあおむけ洗髪による卒中症候群が多発しているという記事が紹介されていました。 スタンダール症候群とも言われていますが、過度な上向き姿勢により頚部に応力が集中することが原因です。歯科診療後にも同様の問題が生じ得ることに、形成外科や整骨院の先生方からのご指摘もあります。
 医療機関で診療行為により他の疾患を惹起するようなことがあってはなりません。
私も、柔道整復師の吉田勧持氏(構造医学創始者)より足底版の必要性を聞かされるまで、考えてもみませんでした。
吉田氏はもう20年近くも前から歯科医師会の講演や様々な歯科の学会等で力説されており、私もそれを受けて10年ほど前にLanding Stabilizerを開発した後は研究会や論文等で啓蒙をしてきました。しかし、残念な事に足底板の普及率は皆無に等しく、現時点で導入されている医療機関は数えるほどしかありません。

 普及率低迷の原因は3つあると考えます。
・知らない=その臨床的意義について医療者側の認識度が極めて低いこと。
・経済的利益に結びつかない=患者側の認知度・要望共に乏しく、厳しい歯科の医療経済環境という 現状において収益効果の全く無い設備にあえて出資する経済的余裕が無いという現実。
・容易に購入出来ない=現状では(株)ヨーゼンによる受注生産のみです。

 私がLanding Stabilizerを開発する以前にも、独自に工夫されて足底板を設置している他の歯科医院も極めて少数ですがおられました。私も売っているものなら購入したいとあちこち問い合わせましたが、製品として販売はされていませんでした。ならば自分で作るしかないと、100件以上の製造業者を当たったのですがすべて断られました。
そんな中で唯一、腰を上げて下さったのが、(株)ヨーゼンの技術部長の佐野直文氏でした。
Landing Stabilizerは富士宮市の(株)ヨーゼン様の多大なるご支援によって実現した製品です。いくつもの試作を重ね多額の開発費用と年月をかけて完成した製品です。
いつの日にか患者さん方の健康のために広く普及する事を願っています。

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