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MSEを使用した矯正治療

 MSEはMaxillary Skeletal Expanderの略で、上顎骨の幅を拡大していく装置です。

上顎骨の正中にMSEを4本の1.4mm径のマイクロスクリューインプラントにて装着します。

装着は麻酔を入れて15分程度で無痛です。

術後は通常、腫れも痛みもほとんどありません。

専用ミニスパナで患者さんご自身でMESの拡大スクリューを少しづつ回転していただくことにより、1か月ほどかけて正中口蓋縫合を広げていきます。

 

 上顎骨は正中口蓋縫合にて接合した2つの大きな骨で、歯を支えているだけではなく、眼球を支え、鼻腔を形作っています。

口蓋を拡大すると同時に一体である鼻腔も広がり鼻の通りがよくなります。

MSEイラスト.gif
頭蓋骨分解図 透明 上顎骨着色青.gif

24歳女性

MSE拡大による骨格の変化(6週間)

Airway全体の拡大効果もあることから、アメリカのUCLA大学付属病院では無呼吸症候群の治療として採用されています。

 

 左右の上顎骨は小児期には接合しておらず、成長による上顎骨の拡大と共に12才位で正中口蓋縫合の接合がほぼ完了します。

縫合完成前の小児であれば歯に固定する可撤式のバイオブロックという拡大装置で拡大が可能ですが、それ以降では歯に力をかけても歯が傾くだけで正中口蓋縫合を開くことは不可能でした。

MSEは上顎骨に直接離開の力が作用するため、成人に対しても効果がある画期的な装置です。

当院では40代後半の患者さんにおいても良い結果を達成しています。

 MSEにて上顎骨の拡大が成功すると1か月ほどで前歯が数ミリ離開します。 その後速やかに上下に矯正用ブレースを装着して歯列と咬合を整えていきます。

下顎の狭窄は骨の幅が狭いというよりも、上顎骨の狭窄により舌が口腔内に収まらず、上下歯間に挟まった舌の圧力で下顎臼歯が内側に倒れ込んでいることにより生じているので、弾性ワイヤーにて倒れた歯を起こすことにより解消します。

 MSEは上顎骨の拡大だけではなく、それを固定元として臼歯の前後的位置関係を整えることにも活用します。

拡大後は3か月程度は骨の形成を待つために外すことは出来ませんが、それ以降は役目を終えたら速やかに撤去します。

撤去は簡単で、5分ほどで済みます。 

無痛もしくは僅かに痛みを感じる場合がありますが、当院では全症例無麻酔で撤去しており、全ての患者さんから麻酔の必要は無いという感想をいただいています。

 

 MSEによる拡大は劇的な矯正治療期間の短縮と、無理の無い非抜歯治療、そして骨格そのものが改善されるために通常の矯正治療に比べて後戻りが生じにくいというメリットがあります。

 

 但し、アメリカUCLA大学付属病院ではMSEにより拡大が出来なかった症例が20~30%報告されています。

これは骨格、年齢によるものと思われます。 やはり高年齢で骨格のガッチリした方の成功率は下がると思われます。

3週間ほど拡大しても前歯が離開しない場合は、正中口蓋縫合に沿ってマイクロドリルでピンホールを数か所開けていくことによってほぼ解消するというイタリアでの報告がありますので、その場合は患者さんのご希望を伺って同手法を施術するか、通常の矯正治療に切り替えるかという事になります。

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MSEによるAirwayの改善データ。

Airwayを3Dプリンターで可視化すると、術前(青)に比べて術後(緑)は約30%の拡大が見られ、呼吸抵抗の有意な改善が認められる。

 

​UCLA大学 WonMoon教授の著書より転載

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